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ルールメイキングとは|市民が制度を動かす方法・実例・手順の完全ガイド

Guide — Rule Making
RULEMAKING

ルールは、与えられて従うだけのものではありません。当事者である市民・事業者・専門家が、ルールそのものを提案し、変えていくことができます。RULEMAKERS DAOが実際に制度を動かしてきた手順と実例を、一枚のガイドにまとめました。

3行でわかるルールメイキング

  • ルールメイキングとは、法律・規制・制度といった社会のルールを、当事者である市民・事業者・専門家が主体的に提案し、形づくっていく取り組みです。一部の専門家だけの営みではありません。
  • 進め方は①課題を見つける → ②ルールを設計する → ③対話・提言する → ④制度を変えるの4ステップ。鍵は「現場の課題を、データと実例で具体的に示すこと」です。
  • 市民発の提言は実際に国を動かしています。RULEMAKERS DAOはデジタルノマドビザの制度化(2024年に在留資格が新設)と合同会社型DAOの法整備(2024年4月に規制が改正・施行)に貢献しました。
2023.6骨太の方針に提案が反映
2024.4在留資格が新設(ノマドビザ)
2024.4合同会社型DAOの規制改正・施行
0コミュニティ参加費(暗号資産も不要)
01

What

ルールを、「与えられるもの」から「つくるもの」へ

社会には、法律・規制・ガイドライン・商習慣など、さまざまな「ルール」が存在します。これらの多くは時代の変化に追いつけず、新しい技術や価値観、社会課題の解決を妨げる「壁」になることがあります。

ルールメイキングは、その壁に最も近い当事者——起業家・市民・専門家——が、行政や政治とも連携しながら、ルールそのものを提案し、変えていくアプローチです。ロビイングのような一部の専門家だけの営みではなく、誰もが参加できる社会の共創として捉え直す。それがRULEMAKERS DAOの考え方です。

大切なのは、「反対する」ことではなく「設計する」ことです。「この規制は理不尽だ」という主張だけでは制度は動きません。現場の課題を具体的に言語化し、代替案を示し、実現可能な形に磨いていく——その一連の営みがルールメイキングです。

02

Compare

「ルールメイキング」「ロビイング」「パブリックアフェアーズ」「規制改革」は近い場所にある言葉ですが、指している範囲が違います。RULEMAKERS DAOでは次のように整理しています。

言葉 指す範囲 主な担い手
ルールメイキング 法律・規制・制度などのルールを、当事者が主体的に提案し形づくる取り組み全般。既存ルールの見直しも、新しいルールの創設も含む 市民・事業者・専門家(誰でも)
規制改革 時代に合わなくなった法律・規制・制度を見直す視点。ルールメイキングのうち「既存ルールを直す」側面 政府(規制改革推進会議など)+現場からの提案
ロビイング 特定の利害を実現するために立法・行政へ働きかける活動。手段の一つ 企業・団体・専門のロビイスト
パブリックアフェアーズ 政策調査・提言・関係構築・メディア対応などを含む、企業と社会をつなぐ戦略的活動の総称 企業(広報・渉外部門)・専門ファーム

RULEMAKERS DAOが大切にしているのは、これを企業の専門部門だけの営みにしないことです。制度の壁に最も近いのは、多くの場合その当事者であり、必ずしも渉外担当を置ける組織とは限りません。

03

Why

技術革新、人口減少、財政の制約——日本は大きな岐路に立っています。変化のスピードに制度が追いつかないなか、現場の課題を最もよく知るのは、その当事者です。

専門家や行政だけに任せるのではなく、市民・事業者がルールづくりに参加することで、社会はより速く、より実態に合った形で更新されていきます。「誰かが直してくれるのを待つ」のではなく、「壁にぶつかった人が設計図を描く」——この転換が、制度の更新速度を上げます。

起業家にとっての3つの意味

  • 事業の前提条件そのものを動かせる。規制は所与ではありません。事業計画の外側にあると思っていた変数を、内側に取り込めます。
  • 先行者としての立ち位置を得られる。制度づくりに早い段階から関わる事業者は、新しいルールの下で最も準備ができている存在になります。
  • 社会的な信頼と接点が生まれる。制度の議論に参加する過程で、行政・政治・専門家・同業者との関係が育ちます。

詳しくは いま起業家が知るべき、ルールメイキングの3つのメリット規制改革とは? をご覧ください。

04

How

RULEMAKERS DAOでは、ルールメイキングを次の4つのステップで実践しています。各ステップで「実際に何をするのか」を添えました。

1

課題を見つける

制度の壁や社会課題を、当事者の視点で具体的に特定する。「不便だ」で止めず、どの法令・どの運用が・誰の何を妨げているかまで降りる。似た困りごとを持つ人を集めると、個人の不満が社会課題の輪郭になる。

2

ルールを設計する

誰に・何を・どう働きかけるかの戦略を組み立てる。反対ではなく代替案を用意し、想定される懸念(安全性・公平性・財源)への答えを先に準備する。実証データがあれば、この段階で最も効く。

3

対話・提言する

政治・行政・専門家と対話し、提言を実現可能な形へ磨き上げる。一度の陳情ではなく、複数のルート(議連・省庁・審議会・パブリックコメント・共同宣言)を並行させる。この過程で提案は必ず形を変える。

4

制度を変える

法律・規制・ルールの実際の変化を生み出す。方針への記載(骨太の方針など)→ 制度設計 → 施行 → 運用と段階があり、記載された時点ではまだ半分。運用が始まってからの受け入れ環境づくりまでが射程になる。

ステップ4の「方針に載る」意味については 骨太の方針とは?、実証データの武器化については 規制のサンドボックスとは? が参考になります。

05

Cases

概念ではなく、実際に動いた制度で説明します。

CASE 01 — VISA
デジタルノマドビザの制度化
2023年3月 プロジェクト始動 → 4〜5月 議員・副大臣へ提案 → 5〜6月 政府の各種計画に記載 → 2023年6月16日 骨太の方針2023に反映(閣議決定) → 10月 第1回日本デジタルノマドサミットで共同宣言 → 2024年3月29日 告示公布 → 4月1日 在留資格「特定活動」(告示53号)の運用開始 → 10月 デジタルノマド官民推進協議会を設立
日本には、海外企業に雇用されたまま長期滞在できる在留資格がありませんでした。短期滞在は90日まで、就労ビザは日本企業との雇用契約が前提、ロングステイは預貯金3,000万円以上——この3つの穴を具体的に示し、代替案として新しい在留資格を提案しました。提案から制度化まで約1年。提案時の収入要件(月40〜50万円以上)と実際の制度(年収1,000万円以上)には差がありますが、その差も含めて記録として公開しています。制度の解説と提言の記録 →
CASE 02 — DAO LAW
合同会社型DAOの法整備
2023年末 ハッカソン開催 → 2024年1月 自由民主党デジタル社会推進本部「DAOルールメイクに関する提言」 → 2024年2月1日 金融庁が定義府令等の改正案を公表 → 3月4日 パブリックコメント締切 → 4月1日 公布 → 4月22日 施行
社員権をトークン化すると「電子記録移転権利」として重い規制がかかり、日本でDAO的なトークン発行は現実的ではありませんでした。ハッカソンの成果をもとに提言がまとめられ、一定の要件を満たす社員権トークンを電子記録移転権利から除外する府令改正につながりました。あわせて、日本のDAOのガバナンスを支える「日本DAO協会」の設立にもメンバーが関与しています。会計・税務の完全ガイド →
CASE 03 — STARTUP
起業を後押しする制度の提言
現場の困りごと → 論点の言語化 → 提言
代表取締役の住所を登記簿に記載する制度の見直しなど、スタートアップの挑戦を阻む規制の改善を提言してきました。大きな法改正だけがルールメイキングではありません。「その一行があるせいで挑戦しづらい」という具体的な運用にも、変えられる余地があります。スタートアップSubDAO →

このほか、ソーシャルセクターのエコシステムに関する提言でトヨタ財団の助成事業に採択されるなど、活動は継続しています。団体の沿革・実績を見る →

06

Tools

ルールメイキングは、ゼロから交渉するばかりではありません。制度側にも「見直しのための入口」が用意されています。

仕組み 何ができるか ルールメイキングでの使いどころ
規制のサンドボックス 期間・参加者・範囲を限定したうえで、現行規制を一時的に緩和した環境で新技術・新事業を実証できる(日本では2018年開始) ステップ2〜3。「主張」ではなく「実証データ」を携えて提言できる
規制改革推進会議 政府に置かれ、規制の見直しを調査・審議する会議体。現場の声を踏まえた議論が行われる ステップ3。当事者が課題を具体的に示すほど改革は前に進む
骨太の方針 政府が毎年おおむね6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針」。翌年度の予算編成と各省庁の政策の指針になる ステップ4の分水嶺。ここに載るかどうかで政策の進み方が変わる
パブリックコメント 政省令・府令などの改正案に対し、誰でも意見を提出できる手続 ステップ3。制度設計の最終段階で当事者の視点を入れる

RULEMAKERS DAOでも、総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の報告書(案)に対し、有志でパブリックコメントを取りまとめて提出しています。

08

Glossary

ルールメイキング
法律・規制・制度といった社会のルールを、当事者である市民・事業者・専門家が主体的に提案し形づくる取り組み。
規制改革
時代に合わなくなった法律・規制・制度を見直し、より良い形に変えていく取り組み。解説を読む
規制改革推進会議
政府に置かれ、規制の見直しを調査・審議する会議体。
規制のサンドボックス
現行規制を一時的に緩和した環境で、新技術・新事業を期間限定で実証できる制度。日本では2018年に開始。解説を読む
骨太の方針
政府が毎年まとめる「経済財政運営と改革の基本方針」の通称。予算・政策の方向性を示す。解説を読む
SubDAO(サブダオ)
関心テーマごとに分かれた活動単位(プロジェクトチーム)。地域・Web3・スタートアップ・ウェルビーイングなどがある。解説を読む
DAO(ダオ)
分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)。中央の管理者に依らず、参加者がフラットに協働・意思決定する組織のかたち。
合同会社型DAO
合同会社を器とするDAO。2024年4月22日施行の金商法 定義府令改正により現実的な選択肢になった。完全ガイド
OPEN BLUE
社会課題に挑むスタートアップを、ルールメイキングの観点から専門家・メンターが伴走支援するプログラム(TOKYO SUTEAM協定事業)。
RIFT(リフト)
社会課題に挑む起業家が、講義と伴走を経て政策提言を磨き発表する、ルールメイキング特化型アクセラレーションプログラム。
09

FAQ

Q.ルールメイキングとは何ですか?

法律・規制・制度といった社会のルールを、当事者である市民・事業者・専門家が主体的に提案し、形づくっていく取り組みです。既存ルールの見直しも、新しいルールの創設も含みます。

Q.ロビイングとは何が違うのですか?

ロビイングは特定の利害を実現するために立法・行政へ働きかける活動で、ルールメイキングの手段の一つです。ルールメイキングはより広く、課題の特定から制度設計、運用の定着までを含む営みで、担い手も専門のロビイストに限りません。

Q.規制改革とルールメイキングはどう違いますか?

規制改革が「既存のルールを見直す」視点であるのに対し、ルールメイキングは「当事者が主体的にルールをつくる・変える」より広い営みです。両者は深く重なります。

Q.個人でもルールメイキングに参加できますか?

できます。RULEMAKERS DAOはDiscordから誰でも無料で参加できる市民コミュニティです。参加費も暗号資産も不要です。関心テーマごとのSubDAOで議論に加わることから始められます。

Q.何から始めればよいですか?

まず課題を具体化することです。「不便だ」で止めず、どの法令・どの運用が、誰の何を妨げているのかまで降りて言語化します。同じ困りごとを持つ人を集めると、個人の不満が社会課題の輪郭を持ち始めます。

Q.提言が制度になるまで、どのくらいかかりますか?

案件によりますが、デジタルノマドビザの場合は2023年3月のプロジェクト始動から2024年4月の在留資格運用開始まで約1年でした。方針文書への記載(骨太の方針など)から制度設計・施行までにさらに段階があるため、「載った時点でまだ半分」と考えるのが実務的です。

Q.提言を通しやすくするコツはありますか?

反対ではなく代替案を示すこと、想定される懸念(安全性・公平性・財源)への答えを先に用意すること、そして実証データを携えることです。規制のサンドボックスで得たデータは、規制改正の客観的な根拠になります。

Q.骨太の方針に載ると何が変わるのですか?

骨太の方針は毎年おおむね6月に閣議決定され、翌年度の予算編成や各省庁の政策の指針になります。ここに盛り込まれることは、国として優先的に取り組む対象になることを意味します。

Q.企業として相談したい場合はどうすればよいですか?

社会課題に挑むスタートアップ・事業者向けに、ルールメイキングの観点から専門家・メンターが伴走する「OPEN BLUE」(東京都TOKYO SUTEAM協定事業)を運営しています。まずはお問い合わせページからご連絡ください。

Q.RULEMAKERS DAOは誰が運営していますか?

一般社団法人RULEMAKERS DAO(代表理事:塩澤好貴、2024年12月25日法人化)が運営しています。弁護士の増島雅和氏、衆議院議員の小林史明氏、株式会社ガイアックスの上田祐司氏などがファウンダー・コミットメンバーとして参画しています。