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【まとめ・Q&A】合同会社型DAOの会計・税務、相談前に押さえる10の論点

【まとめ・Q&A】合同会社型DAOの会計・税務、相談前に押さえる10の論点

本連載「合同会社型DAOの会計・税務」も、いよいよ最終回となりました。第1回から第10回まで、府令改正の本質から組成の実務まで、会計士・税理士の視点でできるだけ具体的に解説してきたつもりです。最終回となる本稿では、これまでの内容を振り返りつつ、私が実際に相談を受ける中で「みなさんが必ず引っかかる論点」を10問のQ&Aに整理しました。

専門家に相談する前にこの10問を押さえておくと、限られた相談時間を本当に難しい論点に集中させることができます。逆に言えば、ここでつまずいたまま組成を進めてしまうと、後から取り返しのつかないコストになりかねません。各論点には、より詳しく解説した連載各回へのリンクも添えていますので、気になる箇所は本編に戻って確認してください。

まず連載全体を3行で振り返る

細かいQ&Aに入る前に、本連載が伝えてきたことを改めて3つに絞ります。

  • 解禁の正体は「府令改正」である。合同会社型DAOを可能にしたのは、2024年4月に施行された金融商品取引法の定義府令の改正であって、「合同会社型DAO法」のような単独の法律ができたわけではありません。
  • 会計はおおむね通常の合同会社と同じ。DAO固有の会計基準は存在せず、論点はトークン発行と暗号資産の保有に集約されます。
  • 税務の中心は「パススルーではない」ことと「暗号資産課税の見直し」。合同会社は法人課税であり、暗号資産の期末時価評価は令和5・6年度改正で大きく緩和されました。

この3点を頭に置いたうえで、10のQ&Aに進みましょう。

相談前に押さえる10のQ&A

Q1. そもそも「合同会社型DAO法」という法律はあるのですか?

A. ありません。合同会社型DAOを成り立たせているのは、金融商品取引法の定義府令(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令等)の改正です。金融庁は2024年2月1日に改正案を公表し、同年3月4日にパブリックコメントを締め切ったうえで、4月1日に公布、4月22日に施行しました。

この改正により、トークン化された合同会社の社員権について、一定の要件を満たす場合には通常の合同会社の社員権と同等の規制(=金商法上の二項有価証券=みなし有価証券)として扱われることになりました。結果として、第二種金融商品取引業の登録を要さずに、社員権トークンによる資金調達や金銭的な収益分配の道が開けたわけです。詳しくは第2回「なぜ『合同会社』だったのか——府令改正で外れた壁」をご覧ください。

Q2. 社員権トークンを発行すると、必ず金商法の開示規制がかかりますか?

A. 募集の規模によります。社員権トークンは二項有価証券(みなし有価証券)に整理されるため、二項有価証券の私募・募集規制に従うことになります。実務上の目安としては、取得勧誘の相手方が499人以下であれば開示や通知は原則不要、これが500人以上(少人数私募の枠を超える)になると有価証券通知書等の手続が問題になりうる、と整理されることが多いです。

ただしこのラインは細部の運用が固まりきっていない部分もあり、勧誘の方法や相手方の属性によっても変わります。断定せず、設計段階で専門家に確認するのが安全です。詳細は第3回「社員権トークンと金商法」で扱っています。

Q3. 合同会社なら、利益はパススルー(構成員課税)で社員に流れるのですか?

A. いいえ。ここが最大の誤解です。合同会社(日本版LLC)は会社法上の持分会社で法人格を持ち、法人税法上は普通法人として法人課税されます。名前に「LLC」と付くため米国のパスススルー課税を連想されがちですが、日本の合同会社は任意組合・LLP・LPSのようなパススルー(構成員)課税の対象ではありません

つまり、まず会社段階で法人税が課され、その後に社員へ利益を分配する段階で配当に類似した課税が生じうる、という二段階(二重課税的)の構造になります。この点を理解せずに「組合のように軽い課税で回せる」と想定すると、収益分配の設計が根本から崩れます。第6回「法人税の罠①」で詳述しています。

Q4. 法人が保有する暗号資産には、いまも期末時価評価で含み益課税がかかりますか?

A. 要件次第で、対象外にできます。かつては、法人が保有する「活発な市場が存在する暗号資産」は、自己発行・第三者発行を問わず期末時価評価の対象とされ、含み益・含み損が課税対象でした。これがブロックチェーン事業の阻害要因と問題視されてきた経緯があります。

そこで段階的な見直しが行われました。

改正 対象 見直しの内容
令和5年度税制改正 自己発行の暗号資産 継続保有するものを期末時価評価の対象から除外
令和6年度税制改正 第三者発行の暗号資産 譲渡制限が付されている等で継続的に保有する一定要件を満たすものを期末時価評価の対象外に(2024年4月1日以後終了事業年度等に適用)

DAOが運用目的で暗号資産を保有する場合、この要件を満たすかどうかで税負担が大きく変わります。時系列は第7回「暗号資産税制はこう変わった」で整理しています。

Q5. トークンを発行して資金を集めた時点で、いきなり課税されますか?

A. トークンの性質によって扱いが分かれます。社員権トークンとして出資の払込みを受ける場合、その払込みは原則として資本取引であり、純資産(出資)の増加として処理されます。これは収益ではないため、発行そのもので直ちに法人税の対象になるわけではありません。

一方、発行するトークンが暗号資産に該当し対価を得て譲渡するような設計の場合は、課税関係も消費税の取扱いも変わってきます。「資本取引としての出資なのか、暗号資産の譲渡なのか」を取引の実態に即して見極めることが出発点です。仕訳イメージは第4回「会計①」、課税・消費税の論点は第8回「法人税の罠②」で扱いました。

Q6. DAOに固有の会計基準はありますか?何を見ればよいですか?

A. DAO固有の会計基準は存在しません。トークン発行という資金調達の論点を除けば、基本は通常の合同会社と同じ会計処理です。保有・自己発行の暗号資産については、ASBJの実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」が基礎になります。

社員権トークンの処理は、それが暗号資産なのか、それとも譲渡制限(Cap)が付された社員権トークンなのか、という性質の見極めで分かれます。「DAOだから特別な会計がある」のではなく、「既存の枠組みのどれに当てはめるか」を丁寧に判断する作業だと考えてください。第5回「会計②」を参照してください。

Q7. 社員が受け取る分配金は、配当ですか、雑所得ですか?

A. 分配の性質と社員の立場によります。合同会社の社員が受ける利益の分配は、会社段階で法人税が課された後の利益から行われるため、配当に類似した課税関係になりうるのが基本線です。ただし、トークンの保有・譲渡から生じる損益が雑所得として整理される局面もあり、分配・譲渡益・雑所得の境界は実務上の悩みどころです。

個人か法人か、事業として継続的に行っているか、といった事情で結論が変わるため、ここは断定を避け、個別の事実関係に当てはめて検討する必要があります。第9回「投資家・社員側の税務」で具体例とともに整理しています。

Q8. 組成は会社をつくった後で会計・税務を整えれば間に合いますか?

A. 順番が逆です。合同会社型DAOでは、定款・業務執行社員の設計・トークン設計の段階で、その後の会計税務がほぼ決まってしまいます。たとえば利益分配の割合や方法、社員権トークンの譲渡制限の有無、業務執行を誰がどう担うかは、課税関係と会計処理に直結します。

「先に登記して走り出し、税務はあとで」という進め方は、後から定款変更やトークン設計のやり直しという高コストな修正を招きます。組成設計の段階から会計・税務の視点を入れることが、結果的に最も安く済みます。第10回「組成の実務」をご覧ください。

Q9. 消費税は気にしなくてよいですか?

A. 取引の中身次第で論点になります。出資の払込み自体は消費税の課税対象ではありませんが、DAOが対価を得てサービスやトークンを提供する場合、その取引が課税取引かどうかを判定する必要があります。暗号資産の譲渡は消費税法上の取扱いが定められており、何を売っているのかによって結論が変わります。

「DAOだから消費税は関係ない」と決めつけず、収益を生む取引を一つひとつ棚卸しすることをおすすめします。詳細は第8回で触れています。

Q10. 結局、最初に相談すべきは何ですか?

A. 「収益と分配の流れ」を一枚の絵にすることです。誰が出資し、会社がどう稼ぎ、どの段階で課税され、どう分配されるか——この流れを図にできれば、論点の8割は見えてきます。逆にここが曖昧なまま個別の処理を詰めても、全体としてちぐはぐな設計になりがちです。

相談の場には、想定する事業内容・出資と分配のスキーム・発行予定のトークンの性質を持参してください。それがあるだけで、専門家が踏み込んだ助言をできるかどうかが大きく変わります。

実務でよくある3つの失敗

10のQ&Aと重なる部分もありますが、相談現場で特に多い失敗を挙げておきます。

  • 「LLCだからパススルー」という思い込み。最も頻度が高く、最も影響の大きい誤解です。日本の合同会社は法人課税であり、分配段階の課税まで見込んで収益設計をしないと、手取りの想定が崩れます(Q3)。
  • 暗号資産の保有要件を確認しないまま運用を始める。令和5・6年度改正で期末時価評価の対象外にできる道が開けましたが、これは要件を満たした場合の話です。譲渡制限や継続保有の整理を怠ると、含み益課税のリスクが残ります(Q4)。
  • 定款・トークン設計を後回しにする。組成の入口で決まる事項を「あとで直せる」と考え、登記後にやり直す——時間も費用も最もかかる失敗です(Q8)。

RULEMAKERS DAOとルールメイクの視点

最後に、私がこの連載を通じて伝えたかったことを述べさせてください。合同会社型DAOをめぐる制度は、府令改正で大枠が整ったとはいえ、募集人数のライン、持分譲渡のシームレス化、分配と雑所得の境界など、当時なお運用が固まりきっていない論点がいくつも残っています。これらは「答えがないから手を出さない」のではなく、「実務の積み重ねでルールを形づくっていく」べき領域だと考えています。

私が監事を務める一般社団法人RULEMAKERS DAOは、まさにこうしたルールメイクをテーマに据えた団体です。新しい器ができたばかりの今こそ、実務家一人ひとりの判断と発信が、これからの標準的な扱いを形づくっていきます。本連載が、その第一歩を踏み出す方の道標になれば幸いです。

制度の細部や個別の課税関係には不確実な部分が残ります。実際の組成にあたっては、本連載を地図として使いつつ、必ず会計士・税理士・弁護士などの専門家に個別具体的にご相談ください。1年間、お読みいただきありがとうございました。

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出典・参考

筆者プロフィール

星野宇潮(公認会計士・税理士/RULEMAKERS DAO 監事)

星野宇潮(ほしの・うしお)/公認会計士・税理士

一般社団法人RULEMAKERS DAO(コンセプト「Democracy 2.0」)の監事。Web3・ブロックチェーン領域のルールメイクと、合同会社型DAOをはじめとする新しい組織形態の会計・税務に取り組む。本連載では、合同会社型DAOの組成を検討する起業家・実務家に向けて、会計と税務の勘所を実務目線で解説しています。



連載|合同会社型DAOの会計・税務

公認会計士・税理士 星野宇潮による全15回+番外編

2024年4月22日施行の金融商品取引法 定義府令改正によって可能になった「合同会社型DAO」について、組成・会計・税務の実務を体系的に解説する連載です。関心のある論点から読めます。

▶ まとめて読む:合同会社型DAOの会計・税務 完全ガイド(器の比較表・判定フロー・FAQ12問・連載全16本の索引)

  1. 第1回 合同会社型DAOが「解禁」された——会計士・税理士が見たその本質
  2. 第2回 なぜ「合同会社」だったのか——府令改正で外れた壁
  3. 第3回 社員権トークンと金商法——有価証券該当性と募集規制
  4. 第4回 合同会社型DAOの会計①——出資・純資産・社員権トークン発行の処理
  5. 第5回 合同会社型DAOの会計②——暗号資産の会計(実務対応報告第38号)
  6. 第6回 法人税の罠①——合同会社は「パススルーではない」二重課税の構造
  7. 第7回 暗号資産税制はこう変わった——令和5・6年度改正の時系列
  8. 第8回 法人税の罠②——トークン発行時の課税と消費税
  9. 第9回 投資家・社員側の税務——分配と譲渡益、雑所得との境界
  10. 第10回 組成の実務——定款・業務執行社員・トークン設計で会計税務が決まる
  11. 第11回 まとめ・Q&A——合同会社型DAOの会計・税務、相談前に押さえる10の論点(本稿)
  12. 第12回 一般社団法人という選択肢——合同会社型DAOと徹底比較する非営利型の会計・税務
  13. 第13回 DAOと寄付の税務——「応援のお金」は誰にどう課税されるのか
  14. 第14回 合同会社型DAOの決算実務——計算書類・社員資本・監査の要否
  15. 第15回 暗号資産税制は「第二幕」へ——金商法移管と20%申告分離課税のロードマップ

番外編 DAOとAIエージェント——「自律する組織」の設計論

← 前の回:第10回 組成の実務——定款・業務執行社員・トークン設計で会計税務が決まる次の回:第12回 一般社団法人という選択肢——合同会社型DAOと徹底比較する非営利型の会計・税務

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