DAOの活動資金は、出資や売上だけでなく寄付(ドネーション)で支えられることが多くあります。ところが「応援のお金」の税務は驚くほど整理されておらず、受け取る側・贈る側の双方に落とし穴があります。本稿では、寄付を受け取るDAO側と寄付する側に分けて、課税の地図を描きます。
受け取る側——器によって天と地ほど違う
| DAOの器 | 受け取った寄付の課税 |
|---|---|
| 合同会社(普通法人) | 受贈益として益金算入=法人税の課税対象 |
| 一般社団法人(非営利型) | 寄付金収入は収益事業に該当せず原則非課税 |
| 一般社団法人(非営利型以外) | 全所得課税のため受贈益として課税 |
| 任意団体(人格のない社団等) | 収益事業のみ課税のため、寄付は原則非課税(ただし後述の留意点) |
見落とされがちなのは一行目です。合同会社型DAOが受け取った寄付は、原則としてそのまま法人税の課税所得になります。「寄付だから非課税」という直感は、普通法人には通用しません。100万円の寄付を受ければ、(他の損益と通算のうえ)法人税等の負担が生じる前提で資金計画を立てる必要があります。
一方、非営利型の一般社団法人(前回参照)であれば、寄付金収入は収益事業由来ではないため法人税はかかりません。寄付を主な資金源にしたいDAOにとって、器の選択はそのまま税負担の選択です。
「寄付」の名を borrowed した対価に注意
名目が寄付でも、リターン(NFT・グッズ・役務)と引き換えなら、それは売上(資産の譲渡等の対価)です。法人税だけでなく消費税の課税対象にもなります。クラウドファンディングの類型整理と同じで、寄付型/購入型/投資型のどれに当たるかを、名目でなく実質で判定してください。
贈る側——控除は「ほぼ効かない」前提で
寄付する側の税制優遇は、寄付先の属性で決まります。
- 個人が寄付する場合:寄付金控除(所得控除)の対象は、国・地方公共団体や公益社団・財団法人、認定NPO法人など「特定寄附金」に限られます。合同会社や(公益認定のない)一般社団法人への寄付は、寄付金控除の対象外です。
- 法人が寄付する場合:一般の寄付金として損金算入限度額の枠内でのみ損金になります(資本金等と所得金額から計算される、実務感覚ではかなり小さい枠です)。
つまり現状の制度では、DAOへの寄付は「税の後押しがない善意」です。募集ページに「寄付金控除の対象ではありません」と明記しておくことは、支援者との信頼関係の面でも重要です。
最大の落とし穴——暗号資産で寄付すると「みなし譲渡」
Web3のドネーションらしく「ETHで寄付を受け付けます」とやる場合、贈る側の個人に重大な論点があります。所得税法59条により、個人が法人へ資産を贈与した場合、時価で譲渡したものとみなされます。含み益のある暗号資産をDAO(法人)に寄付すると、寄付したご本人に含み益部分への所得課税が生じうるのです。
| 寄付の態様 | 贈る側(個人) | 受けるDAO(法人) |
|---|---|---|
| 現金で寄付 | 課税なし(控除もなし) | 受贈益(器により課税/非課税) |
| 含み益のある暗号資産で寄付 | 時価でのみなし譲渡→所得課税のおそれ | 時価で受贈益を認識 |
「善意で寄付したら自分に税金が来た」という事態は、支援者コミュニティの信頼を大きく損ねます。暗号資産での寄付を受け付けるDAOは、この論点を募集時に注意書きとして開示することを強くおすすめします。
実務チェックポイント(第13回)
- 合同会社型DAOが受けた寄付は受贈益として法人税課税。「寄付だから非課税」は普通法人には通用しない。
- 寄付中心の資金計画なら非営利型一般社団法人が税務上素直。器の選択=税負担の選択。
- リターン付きの「寄付」は実質で判定すれば売上(消費税課税)。寄付型/購入型/投資型を設計段階で区分する。
- 個人からの寄付に寄付金控除は原則効かない(公益認定・認定NPO等が相手の場合を除く)。募集ページに明記する。
- 含み益のある暗号資産での寄付はみなし譲渡(所法59条)に注意。支援者への注意喚起を忘れない。
まとめ
寄付は「もらえたら嬉しいお金」ではなく、器・態様・資産の種類の3点で課税が決まる設計対象です。とりわけ暗号資産寄付のみなし譲渡は、支援者を思わぬ形で傷つけかねません。ドネーションを軸にするDAOこそ、税務設計を最初に固めてください。次回は、合同会社型DAOの1年の締めくくり——決算の実務を扱います(合同会社型DAOの決算実務)。
出典・参考
- 国税庁タックスアンサー No.1150:一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
- 国税庁タックスアンサー:寄附金の範囲と損金不算入額
- e-Gov法令検索:所得税法(第59条 贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
- 国税庁:暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)
筆者プロフィール
星野宇潮(ほしの・うしお)/公認会計士・税理士
一般社団法人RULEMAKERS DAO(コンセプト「Democracy 2.0」)の監事。Web3・ブロックチェーン領域のルールメイクと、合同会社型DAOをはじめとする新しい組織形態の会計・税務に取り組む。本連載では、合同会社型DAOの組成を検討する起業家・実務家に向けて、会計と税務の勘所を実務目線で解説しています。
連載|合同会社型DAOの会計・税務
公認会計士・税理士 星野宇潮による全15回+番外編
2024年4月22日施行の金融商品取引法 定義府令改正によって可能になった「合同会社型DAO」について、組成・会計・税務の実務を体系的に解説する連載です。関心のある論点から読めます。
▶ まとめて読む:合同会社型DAOの会計・税務 完全ガイド(器の比較表・判定フロー・FAQ12問・連載全16本の索引)
- 第1回 合同会社型DAOが「解禁」された——会計士・税理士が見たその本質
- 第2回 なぜ「合同会社」だったのか——府令改正で外れた壁
- 第3回 社員権トークンと金商法——有価証券該当性と募集規制
- 第4回 合同会社型DAOの会計①——出資・純資産・社員権トークン発行の処理
- 第5回 合同会社型DAOの会計②——暗号資産の会計(実務対応報告第38号)
- 第6回 法人税の罠①——合同会社は「パススルーではない」二重課税の構造
- 第7回 暗号資産税制はこう変わった——令和5・6年度改正の時系列
- 第8回 法人税の罠②——トークン発行時の課税と消費税
- 第9回 投資家・社員側の税務——分配と譲渡益、雑所得との境界
- 第10回 組成の実務——定款・業務執行社員・トークン設計で会計税務が決まる
- 第11回 まとめ・Q&A——合同会社型DAOの会計・税務、相談前に押さえる10の論点
- 第12回 一般社団法人という選択肢——合同会社型DAOと徹底比較する非営利型の会計・税務
- 第13回 DAOと寄付の税務——「応援のお金」は誰にどう課税されるのか(本稿)
- 第14回 合同会社型DAOの決算実務——計算書類・社員資本・監査の要否
- 第15回 暗号資産税制は「第二幕」へ——金商法移管と20%申告分離課税のロードマップ
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